賃貸契約でよく目にする「敷金」。
その中でも「償却あり」の物件では、敷金の一部または全部が返ってこないことがあります。
この記事では、経理担当者が押さえておくべき「敷金償却」の会計処理・税務処理に加えて、20万円以上の敷金や5年以上の契約に関する「長期前払費用」への該当可否や処理方法まで解説します。
敷金とは?まずは基本をおさらい
敷金は、借主が貸主に預ける保証金のような性格の資産で、問題がなければ退去時に返還されます。
会計上は「差入保証金」として資産計上されます。
- 借方:差入保証金
- 貸方:現金または預金
敷金の「償却」とは?
「償却あり」とは、敷金の一部(または全部)が退去時に返ってこないことを意味します。
例えば、「敷金30万円、うち10万円償却」という契約であれば、退去時に返還されるのは20万円のみです。
この「償却された部分」は実質的に費用として処理します。
会計処理:償却分の費用計上はいつ?
償却額の費用処理は、原則として**償却が確定した時点(通常は退去時)**で行います。
【仕訳例】
敷金30万円、うち10万円が償却、退去時に20万円返還された場合:
① 支払時
コピーする編集する(借方)差入保証金 300,000円
(貸方)普通預金 300,000円
② 退去時
コピーする編集する(借方)雑損失(または地代家賃) 100,000円
(借方)普通預金 200,000円
(貸方)差入保証金 300,000円
税務処理:償却された敷金は損金算入可能?
はい、税務上も償却が確定したタイミングで損金算入が可能です。
契約書に「償却額」が明確に記載されていることが前提となります。
勘定科目の選び方
償却額の費用処理には、以下のような勘定科目を使います。
勘定科目 | 使用シーン |
---|---|
雑損失 | 少額で用途が曖昧な場合 |
地代家賃 | 実質的に家賃の一部とみなされる場合 |
敷金償却損(補助科目) | 科目管理を明確にしたい場合 |
【重要】契約期間が5年以上の場合は「長期前払費用」に注意
敷金の償却額が明記されており、かつ契約期間が5年以上の場合、その償却額は支払時に全額費用処理せず、長期前払費用として資産計上し、契約期間に応じて分割費用化(=償却)する必要があります。
これは、法人税法基本通達 7-3-1 にもとづくものです。
■ 具体例:10年契約・償却額100万円の場合
支払時
コピーする編集する(借方)長期前払費用 1,000,000円
(貸方)普通預金 1,000,000円
毎年末(定額償却)
コピーする編集する(借方)地代家賃等 100,000円
(貸方)長期前払費用 100,000円
このように、「返ってこない支出」でも、契約期間に応じて分割費用処理が必要です。
一括で損金算入すると、税務調査で否認されるリスクがあります。
チェックリスト:敷金償却の処理で見落としがちなポイント
✅ 契約書に償却額・返還条件が明記されているか?
✅ 償却の確定時点(退去日)を把握しているか?
✅ 金額が20万円以上、かつ契約期間が5年以上か?
✅ 長期前払費用に該当する場合、期間配分処理しているか?
まとめ
- 敷金の償却は、返還されないため費用計上が必要(通常は退去時)
- 契約内容が重要。契約書で償却条件の有無・金額を確認すること
- 5年以上の契約かつ償却額が20万円以上であれば、「長期前払費用」として期間償却する必要あり
- 税務上の否認リスクを避けるためにも、正確な処理と記録が重要!
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