賃貸人が受け取った敷金の仕訳

― 全額返金する場合と一部償却する場合 ―

賃貸借契約において、賃借人から「敷金」を受け取ることは一般的です。
敷金は退去時に返還されることが原則ですが、契約内容によっては原状回復費用などとして一部を償却するケースもあります。

本記事では、賃貸人(貸主)側の経理処理について、

  • 全額返金する場合
  • 一部償却する場合

のそれぞれについて、仕訳例を交えて解説します。


1. 敷金の基本的な考え方(賃貸人側)

敷金の性質

敷金は、賃借人の債務(賃料不払い、原状回復費用など)を担保するために一時的に預かる金銭です。

👉 そのため、受け取った時点では収益ではありません。

勘定科目

賃貸人が受け取った敷金は、通常、以下の勘定科目で処理します。

  • 預り敷金(または「敷金」「差入保証金」など)

貸借対照表上は 負債 に計上されます。


2. 敷金を受け取った時の仕訳(共通)

まず、敷金を受け取った時点の仕訳は、全額返金・一部償却いずれの場合も共通です。

  • 敷金:100,000円
  • 普通預金に入金
(借方)普通預金 100,000
(貸方)預り敷金 100,000

3. 全額返金する場合の仕訳

ケース概要

  • 契約終了時に未払賃料や原状回復費用がない
  • 敷金を全額返金

仕訳(返金時)

(借方)預り敷金 100,000
(貸方)普通預金 100,000

ポイント

  • 損益計算書への影響は一切なし
  • あくまで「預かったものを返した」処理

4. 敷金を一部償却する場合の仕訳

ケース概要

  • 原状回復費用などとして一部を差し引く
  • 敷金100,000円のうち
    • 30,000円を償却
    • 70,000円を返金

4-1. 償却部分の考え方

敷金のうち、賃貸人が受け取る部分は、性質に応じて収益処理します。

よくある例:

  • 原状回復費用 → 修繕費収入雑収入
  • 契約で定められた敷引 → 賃貸収入雑収入

※ 実務では「雑収入」を使うケースが多いです。


4-2. 仕訳例(返金と償却を同時に処理)

条件

  • 償却:30,000円(雑収入)
  • 返金:70,000円
(借方)預り敷金 100,000
 (貸方)普通預金  70,000
 (貸方)雑収入   30,000

4-3. 原状回復費用を実費精算する場合

敷金から原状回復費用を差し引き、実際に修繕業者へ支払う場合は、次のような流れになります。

① 敷金から修繕費相当額を充当

(借方)預り敷金 100,000
 (貸方)普通預金  70,000
 (貸方)未払金   30,000

② 修繕費を計上

(借方)修繕費   30,000
(貸方)未払金   30,000

👉 敷金を直接修繕費と相殺しない点が実務上のポイントです。


5. 消費税の注意点

  • 敷金の受領・返還:不課税
  • 償却部分
    • 原状回復費用の精算 → 課税取引になるケースあり
    • 敷引特約による収益 → 原則として課税

👉 契約内容と償却理由を必ず確認しましょう。


6. まとめ

タイミング処理のポイント
敷金受領時負債(預り敷金)として処理
全額返金損益に影響なし
一部償却償却部分のみ収益計上
消費税償却理由により課税関係が異なる




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